暖かくなってくると、皮膚のトラブルが増えてきます。


ひとくちに皮膚炎といっても、原因は様々で、
感染症だったりアレルギーだったりします。


耳も皮膚の一部で、春から夏にかけて炎症を起こすことが多く、
たかが外耳炎といっても油断はできません。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

★耳の構造・外耳炎とは?

 犬の耳は、水平耳道と垂直耳道に分かれています。

 
イメージ 1


 一般に外耳炎の場合、この垂直耳道が炎症を起こし、
 耳がくさくなったり、耳垢が出たり、かゆくなったりします。

 外耳炎を起こす原因は、細菌やマラセチア(酵母)の感染です。
 若い場合は耳ダニの場合もあります。

 細菌やマラセチアは、常在菌と呼ばれ、皮膚の上や耳に通常に存在します。
 これらがアレルギーや湿気などで異常に繁殖したときに、外耳炎を起こします。

 当院では、耳垢を顕微鏡で観察し原因菌の特定をしてから、治療にうつります。

 
★治療方法

 軽度の外耳炎であれば、耳の洗浄と点耳薬で治療します。 
 たいていは1週間程度で良くなります。
 
 重度の場合は、内服薬を併用することがあります。
 主に抗生剤・抗真菌剤を使用します。
 かゆみがひどい子は、かゆみ止めも処方します。
 
 再発を繰り返している場合は、感受性試験という
 『どの抗生剤に効果があるか』を調べます。
 抗生剤の多用により細菌が抵抗力を持ってしまうためです。
 
 
★外耳炎の厄介なところ①

 再発を繰り返したり、炎症を起こし続けてしまうと(慢性外耳炎)、
 完治は難しくなってしまいます。
 たいていはアレルギー体質が悪さをしていることが多いです。

 この慢性外耳炎を放っておくと、耳の入り口がふさがってしまいます。

イメージ 2


 こうなってくると、かなり治療は長引き、完治はほぼ不可能です。
 なによりもまず、入り口はふさがっても耳の奥では炎症が持続しているため、
 耳掃除や点耳薬でも治療ができず、飲み薬で治療しなければなりません。

 それでもダメな場合は手術で、ふさいでしまっている部分を切除します。
 結構大変な手術になります。

 写真のミミちゃんは、幸い、飼い主さんの根気強い通院治療のおかげで
 なんと!もとの状態の耳に戻ることができました。

 治療開始後5ヶ月のミミちゃんがこの写真です。

イメージ 3


 ペットショップから来た時にはすでに耳がふさがっており、
 手術を前提に話を進めていたので、正直驚きでした。
 
 
★外耳炎の厄介なところ②

 かゆみのせいで頭を振ったり、後足で掻いたりする事で、
 『耳血腫(じけっしゅ)』という病気を起こすことがあります。

 耳介(じかい:みみたぶのこと)のなかの血管が破れてしまい、
 血液がたまる病気です。

 まれに免疫疾患のこともありますが、たいていは外耳炎が原因です。

 この場合は手術で治してあげる必要があります。
 放っておくと、耳が変形します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

外耳炎は早期治療で良くなります。
また良くなったあとは、ご自宅での定期洗浄が重要です。


耳掃除や点耳の仕方なども病院でお教えしておりますので、
ご質問は遠慮なくどうぞ。